美しいとは、なんだろう。
こんにちは。海豚です。今日はEAPの課題を通して考えた人種問題のことについて書きたいと思います。少し長めの記事ですので、時間に余裕のある方は是非お付き合いください。
EAPの授業では、毎授業何かしらの宿題が課されます。その中でも、今回お話ししたいのはスピーキング&リスニングの課題のことです。前回に課された宿題は、youtubeの「A Girl Like Me」という動画を見て、簡単なノートを取ることでした。
この動画の内容を、自分なりに要約をつけたり、感想や意見を加えたりして紙にまとめるというのが課題です。
上に掲載した動画の内容としては、黒人の若い女性の方々が、自分の容姿や人種でどう劣等感を抱いているか、またどう感じているのかを、幼児に対する肌の色に関する研究を織り交ぜつつ、取材したものです。
しかし、私は英語の口語表現がよく分からず、内容を飲み込めません。
人種差別の問題がテーマだということは分かる。でもそれ以上は上手く理解できない。
さて、どうしたものか…。そこでひとつのアイディアが浮かびました。
「そうだ、留学生と一緒に見てもらおう。」
そこで、私は留学生でとても仲良くしているお友達にお願いをして、この動画を一緒に見てもらうことにしました。彼女はアメリカから日本にやってきた、アフリカン・アメリカンの短期留学生です。
彼女と一緒に、一通りビデオを見てから、彼女にどう思ったか感想を聞きました。すると、彼女は少し考えてから、たくさんのことを話してくれました。
「アメリカでは、日本以上に人種問題はいまだに根強く残っている。何百年も前に、黒人種の人々は、アフリカから奴隷として連れてこられて、花や道具と同じように、物のように扱われてきた。そのせいで、今でも黒人種は社会や家族から抑圧を受けている。今この世界においても」
「だから、私のような多くの黒人の少女たちは、自分の容姿や肌の色をとても気にして、それらを変えようと努力するんだ」
彼女はそう言いました。そして、私の思いもよらない方向へと話を進め始めました。「動画の最後のシーン、覚えてる?女の子たちが、白いクリームを髪の毛に塗っているでしょう。あれは、縮れ毛を矯正して、ほかの人種の人々のように髪を真っ直ぐにする薬品なんだよ。でも、あの薬品は有害なんだ。とても危険なんだよ」
そう言って、彼女はひとつの動画を探し当ててくれました。
この動画では、アメリカ国内で一般的に販売されているリラクサー(先ほど説明した白いクリームのことですね)に含まれるLYEという薬品が、どれほど有害で危険かを紹介しています。彼らは手袋にマスク、防護メガネまで装着して、薬品を扱っています。しかし、その留学生の友人によると、多くの少女たちはそのようなものは一切使わず、素手でクリームを使用するといいます。
「この危険な薬品は髪から皮膚に伝わり、脳まで浸透する」
彼女はそのような表現で、いかに少女たちが無防備にクリームを使用して、自分の髪形を変えようと努力するかを教えてくれました。しかし、彼女はこう言います。
「そもそも、こういう製品が店頭に並んでいるだけで、私は社会から抑圧されていると感じる」
その言葉は、私の胸に刺さりました。
私は旅行などを通じて、何度も外国を訪れてきました。しかし、人種問題を自分自身の問題として考えたことは一度もなかった。人々が心のうちに秘めている思いや考えに至るほどの余裕がなかったのです。考える気がなかった。自分とは関係がないから。自分が日本という国において、他人種と比較されて劣等感を感じたり、苦しみを覚えたことがないから。
「私も家族に、髪をまっすぐにしなさいと何度も言われた。でもそんなことしない。今の自分が私の考える美しさであって、これが私のスタイルだから」
「見た目で私のことを判断されたくはない。でも容姿や肌の色は生まれ持ったものだから、変えられない。だから私は、自分の行動や言動で、私自身の美しさをみんなに分かってもらいたい。」
彼女は最後にこう言いました。
「See my inner beauty.」
私の内面の美しさをみて。
彼女からのメッセージだと思いました。
私は、最初に「A Girl Like Me」のエンドロールを見たときに、「ああよかったな、髪の毛を矯正できて。彼女たちはこれで髪型を負い目に感じなくてよくなるんだから」
そう思いました。しかし、それは何も解決したことにはならない。なぜ髪の毛をストレートにしなくてはいけないのか。なぜリラクサーが店頭に並ぶのか。なぜありのままの自分でいるだけで負い目を感じる必要があるのか。なぜ。
私は、自身の経験を臆せず話してくれた、彼女に対する感謝の気持ちで、胸がいっぱいになりました。
私の考えは、人種差別をどう克服するかばかり見つめていて、その人種差別という現実自体をどう打破するかは考えていなかった。問題そのものは、あって当然のものだと思っていた。
彼女は、私自身が持ち続けていた考えそのものに、静かに警告を放ってくれたような気がしました。
人種差別がなくなればいいと願うことはできる。しかし、それ以上の解決策まではわからない。大好きな彼女が心を打ち明けて話してくれたその現実を、どう変えていけるのか。たくさん本を読み、たくさん人と話し、たくさん勉強を積み重ねていく。
そうして自分が成長していく過程で、この問題と向き合い続けたい。
考え続けていきたい。
彼女との話の中で、そう強く思いました。